私の職場の職員室には、メインとなるコピー機兼プリンターが1台しかないので、モノクロ印刷する時には皆それを使ってプリントアウトするのです。それゆえに非常に使用頻度が高く、ミスプリントや印刷してもそれを取らないで放置するというケースが多く、ムダ紙が大量に発生していました。
見かねた私はそのムダ紙の枚数を毎朝カウントし、それをグラフ化してコピー機の上に貼り出す取り組みを始めたところ、最初の頃(すなわち、ベースライン期)は1日に70枚以上発生していたものが、1か月経った今では大体10枚以内、少ない時には0枚という日も見られるようになってきました。
なおこの期間、私は「ムダ紙を減らしましょう!」というスローガンをヒステリックに叫んだり、ムダ紙を出した人を責めたりしたことは一切ありません。黙って粛々と毎朝前日に発生したムダ紙の枚数をカウントし、それをグラフ化し掲示していっただけです。グラフのタイトルに「Ethical Project(ムダ紙削減)」と入れておきましたが、「道徳」や「倫理」を直接的に説いたわけではありません。
この取り組みはABAでいうところの「セルフマネジメント」という手法にあたると思います。グラフを見た人は少なくとも「自分はムダ紙を出すまい」、つまり「自分がムダ紙発生の原因にはなるまい」という意識を自然に持つようになり、自分の行動に気を付けるようになってきたからだと思うのです。ということはもしかしたら、明確な「強化」は伴わなかったものの、「集団随伴性」の効果も働いたのかもしれません。
完全に0にはならないものの、トレンドとしては良い方向に向かっているこんな「じぶん実験」の取り組みを通して、ABAの素晴らしさを改めて痛感した次第です。