記録をとることのススメ

子どもが示す「困った行動」にはいろいろなものがありますが、それについて述べる際に盛り込むべき項目には次のようなことがあります。

⑴ いつ…
⑵ どのようなきっかけで起こった…
⑶ どのような行動で…
⑷ どのような結果になったか

なぜ、こういう項目を盛り込む必要があるかというと、それを述べた人以外の人が聞いても、同じ行動の状況がイメージできる必要があるからです。
つまり、行動を定義する場合には、誰が読んでも(聞いても)一致したイメージが持てるように、できるだけ具体的に記述しておくことが大切なのです。
それは例えば、次のような記述になります。

「日に10~20回程度、1回に5分間位、教員の声をかき消す程の大きさで、大きな声を出す」

これなら誰が読んでも、同じ状況がイメージできますね。

さて、行動の記録のとり方には、大きく2通りあります。

⑴ まず、「行動の直前の出来事と直後の対応を記入する」やり方です。これを「ABC記録」と言うこともあります。この「ABC」とは、先行事象(Antecedents)・行動(Behavior)・結果事象(Consequences)の頭文字を取ったものです。

⑵ もう一つは、「行動がいつ起きたかという頻度を記録する」やり方です。これを「スキャッタープロット」(散布図データ)と言います。これは1日を30~60分刻みの時間帯で区切り、それぞれの時間帯にその行動が何回あったかを記録していきます。

これら2通りの記録方法ですが、それぞれに特徴があり、「行動のきっかけや事後の対応と行動との関係がよくわからない場合」には「ABC記録」を、「1日の中でいつ、その行動が多いのか少ないのか知りたい場合」には「スキャッタープロット」を使います。
一般的には、「ABC記録」で直前と直後で同じパターンがよく見られる行動を把握してから、その行動についてのみ取り上げて、「スキャッタープロット」で頻度を調べます。

ところで、記録をとっていくとどんな良いことがあるのでしょうか?

まず「ABC記録」ですが、これは行動の「直前の出来事」と「直後の対応」について知ることができるので、それぞれの関係性が見えてきます。そうすると、指導者は自らの対応を見直すことができ、子どもの困った行動に冷静に対処できるようになります。

次に「スキャッタープロット」ですが、絞り込んだ特定の行動の起こりやすい時間帯が見えてきます。そうすると、子どもの困った行動を事前に予測できるようになるので、これまた冷静に対処できるようになります。

ところで、行動に対処することを「介入」と言いますが、介入の前と後にそれぞれ記録をとっておき、後でそれを比較すると、介入によって行動が増えているか、減っているかを見極めることができます。
この比較は、指導・支援の介入が適切かどうか判断することに繋がります。それによって、行った指導・支援の介入のやり方を見直すことができるのです。

その他にも、記録をとることにはいろいろとメリットがあります。

⑴ 実態(事実)がわかる

困った(不適切な)行動は、なんとか減らしたい、できればなくしたいと思うがゆえに、どうしてもそこだけに目が向きがちです。そのため、非常にたくさんあるように感じてしまうのです。しかし記録をとってみると、冷静になって客観的に事実を見ることができるようになります。そうすると、思っていたよりも意外に少ないことがよくあるのです。

⑵ 変化がわかる

これについては前述しましたが、介入前(これを専門的には「ベースライン」と言います)と介入後(インタベンション)を比較し、なんらかの変化が見られれば介入効果があったか否かがなんとなく見極められます(厳密に言うと、これだけでは判断できません)。

⑶ 記録をとるだけで困った(不適切な)行動が減ることがある

不思議なことですが、そういうことはよく見られます。これは、指導・支援者が自らの指導・支援について自覚的になるとか、子どもが記録をとられていることに気づいて自らの行いを意識するなどの理由が考えられます。このことを専門的には「反応性」とか「反応効果」と言うことがあります。