子どもに言うことをきかす法

日頃よくあることとして、しつけ、保育、教育、療育の場において、子どもに対して何らかの指示を出した際に、子どもが「その指示に従わない」(ありていに言えば、大人の言うことをきかない)ということがあります。そうするとその大人は、困る、いらだつ、自信をなくすなどの思いをすることがあるわけです。では、なぜ子どもは指示に従えないのでしょうか?その原因はいろいろあると思うのですが、ここでは次の3つを挙げておきます。

 ① その指示がわからない(「指示を聞いていない」ことを含めて)
 ② (指示は聞けたが)その言われた通りにやることができない
 ③ (指示を出した大人が)子どもがその指示に従わなくてもそのままにしておいた

①に対しては、子どもの理解レベルに合わせて、「わかるように説明する」(しっかり聞かせる)ことで対処すればよいはずです。さらに、②に対しては、子どもの獲得スキルレベルに合わせて、「できるように丁寧に教える」ことで対処すればよいはずです。問題は③の場合で、こうする(指示に従わなくてもそのままにしておく)ことで、子どもは「(この大人の)言うことをきかなくてもへっちゃらだ」という思いを持つようになって、ますます言うこと(指示)をきかなくなるのではないでしょうか?それどころか、その指示を出した特定の大人の言うことばかりでなく、大人全般に対して言うこと(指示)をきかないというよくない癖(習慣)を学習してしまうのではないでしょうか?

従って、子どもに対して「指示を出す」ということは、思いのほか大事なことで、そのポイントがいくつかあります。まず、指示を出す際の重要なポイントには、次の3つがあります。

 ① 簡潔明瞭にわかりやすく出す
 ② 子どもの注意(注目)を十分に引き付けてから出す
 ③ 子どもの「反応」を確実に引き出す。そのためには「手助け」もいとわない

ここで言うところの「手助け」のことを、専門的には「プロンプト」と言いますが、それを出す際のポイントも2つあります。

 ① 指示と同時か、遅くともその直後には出す
 ② はじめは多めに出すが、徐々に減らしていく

はじめはプロンプトを多めに出すことを「フルプロンプト」と言い、それを徐々に減らしていくことを「プロンプト・フェーディング」と言います。このプロンプトには次のようにいろいろな種類があって、その強弱もいろいろです。

 ① 身体プロンプト(身体に手を添える)
 ② ポインティング(正解を指さす)
 ③ モデリング(やってみせる)
 ④ 音声プロンプト(追加の声かけ)
 ⑤ 視覚プロンプト(目印、絵カード)

「指示」の出し方と「プロンプト」の仕方は重要ですが、それだけでは「言うこと(指示)をきく」という望ましい行動は増えていきません。これは、別項(「ABAに基づく子どもの指導原理」)で述べたように、「行動が増える」ためには行動の後(結果事象)に「強化」されなければならないからです。わかりやすく言えば、指示に従って反応(行動)した結果、褒められる(強化される)ことによって、その望ましい反応(行動)は続いたり(このことを専門的には「維持」と言います)、増加したりするということです。この「強化」にも、次のようにいくつかのポイントがあります。

 ① 反応の直後に素早く行う
 ② 褒める時は心を込めて盛大に(大げさなくらいに)
 ③ 褒め言葉と同時に使うもの(これを専門的には「強化子」と言います)は飽きがこないように、ごく少しずつを使い回す
 ④ 慣れてきたら徐々に間引く(このことを専門的には「間欠強化」と言います)

強化する際に褒め言葉と同時に提示する「強化子」には、次のようにいろいろな種類があります。

 ・食べ物(お菓子など)や飲み物(ジュースなど)
 ・おもちゃ、絵本、ビデオ
 ・身体接触(タッチ、ハグ、抱っこ、くすぐりなど)
 ・褒め言葉、笑顔(これらを専門的には「社会的強化子」と言います)
 ・丸、シール、点数、トークン(代用貨幣)

強化するために使ったものが、本当に「強化子」として機能するかどうかは、実際に使ってみなければわかりません。すなわち、「その強化子を使った結果、子どもの望ましい行動(反応)が増えた」ということで初めて、そのものが強化子であることが証明されるのです。従って、子どもによって強化子は異なる、大人にとってはつまらないものでも強化子になりうる、同じ強化子がいつまでも強化子になりえない、すなわち、場面や状況によって異なったり、やがて飽きが来るということは大いにありうるのです。