この3つは子どもと接する限り、避けて通ることができない重要な関わりです。しかし、それぞれを効果的に進めるのは、意外に難しいものです。そこで、ここではそのコツを解説します。
まず約束ですが、これを理解したり、守るということは子どもの重要な目標になります。なぜかと言うと、自己コントロールの力を身に付けることだからです。しかし多くの場合は例えば、「エレベーターで遊んではダメだよ、いいね」などという抑制的な内容が多いものです。これでは守っても、子どもはあまり得には感じられないので、「やくそく」という言葉を聞いただけで、逃げ出すようになってしまいます。
そこで、約束を守らせるコツですが、次の3点を挙げておきます。
① 簡単に守れる約束から始めるようにします。
② 守れたら子どもにとって「よかった」と思える結果を伴わせる、すなわち十分な好子が与えられる必要があります。
③ 禁止だけを約束するのではなく、その代わりとなる別の適切な行動を示すことが重要です。例えば、「エレベーターでは遊びません。代わりに遊具室で遊びます」というような言い方をします。
約束する際には、聴いただけ(聴覚的な情報)では記憶から消えてしまうので、記憶に残って、いつでも参照できるように、リマインダーとして視覚的に明示することも効果的です。また、その際にトークン・エコノミーやレスポンスコストのシステムを用いるのもよいことで、その場合のステップアップの仕方は子どもの実態に合わせます。
次に、上手な禁止の仕方について、解説します。
自閉症などの発達障害のある子どもは、その特性として、その場の文脈や雰囲気を読むことが苦手なことが多く、そのために単なる禁止だけでは、望ましい行動を自発することが難しいのです。従って、してはいけないこと(禁止)を伝えるだけでなく、代わりに何をすべきかということを、きちんと伝えることが大事です。
では、上手な禁止の例をお示しします。
校庭で動き回ってしまう子どもに対して、「ウロウロしません」という言葉の指示だけ出したのでは、効き目が薄いことがあります。そこで、次のような指示の出し方をすると良いでしょう。
✔ リングや足形を置くことで、立ち位置を明示します。
✔ 「マークのところに行きます」と具体的に指示します。
✔ 「枠から出ないで座ります」と具体的に指示します。
最後に、上手な叱責の仕方について、解説します。
基本は、“理由よりも行動で指示する”ことが大事です。「どう(行動)すべきか」の方が、「なぜ(理由)いけないのか」よりも子どもにとってわかりやすく、理解させやすいのです。特に、言語や抽象的な理解に難しさのある自閉症などの発達障害の子どもには、理由よりも行動を重視し、その上で「なぜいけないのか」という社会的ルールを教えるようにします。
また、かんしゃくを起こしていたり、泣き叫んでいる場合の対応ですが、大人がいくら声を荒げて叱ったり、大声で説明しても、子どもには伝わらないばかりか、余計に興奮させてしまい、火に油を注ぐ結果になってしまいます。こういう場合には、本人が落ち着く場所に連れていき、かんしゃく・興奮が収まってきた時点で、視覚的な支援を含めた、わかりやすい説明を冷静に行いましょう。
いずれにしても、体罰は絶対に厳禁です!なぜかと言うと、大人が痛みや力を用いて、行動を教えると、子どもは力によるコントロールを「力の強い人が弱い人に意思を押し付ける手段」として、学習してしまいます。すると今度は自分がそうされたように、自分よりも力の弱い人に対して、自分の主張を力や暴力によって押し通そうとするようになってしまいます。それゆえに、体罰は絶対にしてはいけないのです!
体罰には、他にも次のようないくつかの問題点があります。
① 乱用される危険があります
一時的には効き目が見られるので、乱用してしまう危険があります。しかし段々に効き目が薄くなるので、体罰がエスカレートしてしまう危険性もあるのです。
② 子どもが体罰する人を怖れ、避けるようになります
その反面、陰では他の大人の言うことを聞かなくなります。
③ 望ましい行動も含めて、行動全体の頻度が減ります
「何もしない方が安全」と考えるゆえに、活動が鈍くなるからです。